今注目! 加賀百万石の歴史を肌で感じられる 兼六園、金沢城、長町武家屋敷跡、寺町を歩く

江戸時代、加賀藩は文化奨励策をとり、江戸や京都から名工や文化人を招きました。そして、江戸の武家文化と京都の公家文化が融合して、金沢で独自の武家文化が開花。その風土は今もしっかり受け継がれています。

本多の森から兼六園、金沢城公園、尾山神社、長町武家屋敷跡を結ぶ「加賀百万石回遊ルート」から、足を延ばして、にし茶屋街、寺町寺院群へ。加賀藩から続く歴史と文化を感じられる、とっておきの歴史散歩に出かけませんか。

加賀藩の美意識が今も息づく本多の森界隈

  • 国立工芸館

  • ライトアップされた国立工芸館

  • 加賀本多博物館

  • ライトアップされた石川県立歴史博物館

  • 金沢市立中村記念美術館

  • 本多公園・旧本多家長屋門(国の登録有形文化財)

3代藩主前田利常の頃より本格的に取り組み始めた文化奨励策により、茶の湯や能などの文化は武家に限らず、町人にも広まり、金沢に根づきました。

武家はもとより、町人もが目覚めた美意識。時代を経てもしっかり息づくその意識の高さを知ることができるのが本多の森界隈です。ここは、かつて加賀藩の筆頭家老・本多家とその家臣団が暮らしていた場所。地内の加賀本多博物館では本多家に伝わる武具や馬具、調度品などを見ることができます。広い敷地にはほかにも、石川県立美術館石川県立歴史博物館といったミュージアムが点在。さらに2020年10月、日本海側初となる国立美術館の国立工芸館が東京より移転オープンして、ミュージアムが密集するアートの最先端エリアとして、ますます注目を集めています。また、本多の森公園を下れば、多くの茶道具を展示する中村記念美術館や、国際的な建築家谷口吉生氏が設計した鈴木大拙館、本多公園へとつながります。

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美術の小径・歴史の小径・緑の小径

石川県立美術館などは丘陵地の上にあり、ふもとの中村記念美術館へは、辰巳用水が作る渓流沿いに石段が続く「美術の小径」か、本多家上屋敷跡の遺構が見られる「歴史の小径」(夜間・冬季閉鎖)の階段を下ります。さらに、中村記念美術館から先、鈴木大拙館までは「緑の小径」と名付けられた散策道が続き、途中には本多公園もあります。いずれも気持ち良い散策が楽しめますので、ぜひ歩いてみては。

加賀百万石の栄華を今に伝える兼六園周辺

  • 桜咲く兼六園の曲水

  • 兼六園 秋から冬は雪吊りが施される

  • 成巽閣 つくしの縁

  • 成巽閣 群青の間

  • 朱塗りの社殿が目を引く金澤神社

  • 金沢の地名の由来となった金城霊澤

本多の森に隣接する兼六園は、歴代藩主が200年近くの長い歳月をかけて造営した大名庭園。日本三名園の一つに数えられ、国の特別名勝に指定されています。

兼六園に隣接する成巽閣は13代藩主斉泰が母・真龍院(しんりゅういん)のために建てた隠居所で、日本で唯一現存する大名正室の御殿。前田家奥方の雅やかな暮らしを今に伝える所蔵品や庭園も見事です。さらに、金澤神社や加賀藩家老の屋敷を移築した旧津田玄蕃邸(兼六園管理事務所)など、兼六園に隣接する加賀藩ゆかりの場所もお見逃しなく。

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金沢のまちを縦横無尽に走る用水

金沢の景観を印象づけているのが用水の存在。物資運搬や防火など、さまざまな用途で作られた水路は全部で55本、長さはあわせると150kmにもなるといわれます。代表的なのが兼六園も流れる辰巳用水、繁華街のせせらぎ通りを流れる鞍月用水、長町武家屋敷跡を流れる金沢で最古の大野庄用水。いずれも金沢城や城下町の発展に欠かせない存在だったもので、現在も農業用水として使われたり、まちに潤いをもたらしたりしてくれます。

金沢城から利家とまつを祀る尾山神社へ

  • 金沢城公園 石川門(国指定重要文化財)

  • 菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓

  • 鶴丸倉庫(国指定重要文化財)

  • 河北門から見る菱櫓

  • いもり堀側から見る金沢城本丸園地

  • 玉泉院丸庭園

  • ライトアップされた玉泉院丸庭園

  • 鼠多門橋と鼠多門

  • ライトアップされた鼠多門

  • 尾山神社神門(国指定重要文化財)

金沢城石川門は江戸時代に建てられた金沢城内では数少ない現存建物で、国指定重要文化財です。石川門をくぐると、河北門や五十間長屋、橋爪門などの建物が目に飛び込んできます。いずれも平成に復元されたものですが、往時の建築を忠実に再現しています。現在、歴代藩主の居館だった二ノ丸御殿も、その復元をめざして発掘調査が行われています。

また、歴代藩主が愛でた玉泉院丸庭園も、発掘調査を経て平成27年に再現されました。

令和2年に復元された鼠多門から、加賀藩祖・前田利家と正室お松を祀る尾山神社へ。境内はかつて金谷出丸があった場所で、玉泉院丸と金谷出丸の間にあった水堀を跨ぐ鼠多門橋も、新たに架け直されました。尾山神社の神苑は金谷出丸に作られた庭園だったものです。尾山神社といえば和漢洋の建築様式が用いられた神門(国指定重要文化財)が有名ですが、金沢城側にある東神門は金沢城の二の丸の唐門を移築したもので、こちらもぜひお見逃しなく。

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殿さま気分で優雅にお茶を

玉泉院丸庭園を一望できる休憩所「玉泉庵」。ここには和室もあり、呈茶が受けられます。オリジナル上生菓子は2カ月ごとに変わります。お殿さま気分、お姫さま気分になって特等席での一服、いかがですか? 茶道が盛んな金沢では、呈茶が受けられる場所もたくさんありますが、眺めの良さはここがピカイチ。実はあまり知られていない穴場スポットでもあります。

江戸時代、武士たちが暮らしていた長町武家屋敷跡

  • 長町武家屋敷跡 土塀が続くまちなみ

  • 長町武家屋敷跡 土塀が続くまちなみと大野庄用水

  • 冬、こも掛けされた土塀

  • 武家屋敷跡野村家

  • 前田土佐守資料館のタペストリー

  • 金沢市足軽資料館の内部

  • 金沢市老舗記念館

尾山神社から5分ほど歩くと到着する長町武家屋敷跡界隈。ここは藩政時代に加賀藩の中級武士が住んでいたところで、細い路地や土塀、長屋門などが往時の姿をとどめています。路地を曲がったら、お侍さんが出てきそうな、そんな城下町らしい雰囲気が人気で、金沢市の伝統環境保存区域および景観地区にも指定されています。土塀を雪や凍結から守るための「こも掛け」は冬の風物詩。大野庄用水沿いには、用水の水を引き込んだ見事な庭園が今もある武家屋敷跡(「武家屋敷跡野村家」のみが内部公開を行っています)が続き、また往時の武士の暮らしを垣間見ることができる旧加賀藩士高田家跡金沢市足軽資料館、加賀藩の上級武士のことを紹介する前田土佐守家資料館、歴史ある薬種商を再現する金沢市老舗記念館などがあります。長町武家屋敷休憩館には観光ボランティアガイド「まいどさん」が常駐しているので、周辺の案内をお願いすることも可能。

大野庄用水に並行して流れる鞍月用水沿いには、おしゃれなカフェやレストランなどが建ち並び、繁華街の香林坊へと続きます。

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お庭を眺めつつ、和スイーツに癒やされる

長町武家屋敷界隈には、工芸品や雑貨、お土産物の店が点在していて、中でも和菓子店や和スイーツを扱う店が目を引きます。庭園を眺めながらお菓子や甘味が食べられる店もいくつかあり、歩き疲れたら、気軽に入って糖分補給はいかが?
(写真は「加賀生麩処 茶庵」の麩万寿)

にし茶屋街から古いまちなみに藩政時代の面影が偲ばれる寺町寺院群へ

  • にし茶屋街

  • 西茶屋資料館

  • 寺町のまちなみ

長町武家屋敷跡から犀川を越えて15分ほどで到着するにし茶屋街には、出格子の茶屋様式の家が軒を連ね、人気の甘味処やお茶屋を再現した西茶屋資料館があります。大正時代に建てられた西検番事務所(国の登録有形文化財)の脇に続く細い路地を進み、国道を渡るとそこはもう寺町寺院群です。国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された古いまちなみが広がり、忍者寺の通称で知られる妙立寺(拝観は有料・要予約)や願掛け寺と呼ばれる香林寺(拝観有料)はすぐそこ。


(文/若井憲○北陸ライター)

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金沢町家発酵カフェで老舗の味を手軽に

金沢の郷土料理「かぶら寿し」を食べたことがないという方におすすめしたいのが、寺町から少し南へ行った四十萬谷本舗弥生本店に併設されたカフェ。老舗がつくるかぶら寿しとおすすめの漬物2種、お茶のセットメニューがあり、庭を眺めながらじっくりと味わってみてはいかがでしょうか。気に入れば、買って帰ることももちろんOK。糀甘酒を使ったスイーツもあります。明治時代に建てられた吹き抜けがある建物は見ものです。

紹介したスポットをマップで見る

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  • 加賀本多博物館
  • 石川県立美術館
  • 石川県立歴史博物館(いしかわ赤レンガミュージアム)
  • 国立工芸館
  • 中村記念美術館
  • 鈴木大拙館
  • 美術の小径・緑の小径
  • 兼六園
  • 成巽閣
  • 金澤神社
  • 辰巳用水
  • 大野庄用水
  • 鞍月用水
  • 金沢城公園・玉泉院丸庭園
  • 金沢城石川門
  • 鼠多門・鼠多門橋
  • 尾山神社
  • 金沢中央観光案内所
  • 長町武家屋敷跡界隈
  • 長町武家屋敷休憩館
  • 武家屋敷跡 野村家
  • 旧加賀藩士高田家跡
  • 金沢市足軽資料館
  • 前田土佐守家資料館
  • 金沢市老舗記念館
  • にし茶屋街
  • 金沢市西茶屋資料館
  • 妙立寺
  • 願掛け寺 香林寺
  • 四十萬谷本舗 本店

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