金沢の伝統工芸作家が本気でつくる唯一無二のアクセサリーを見つける

藩政期、加賀藩は16世紀後半に「加賀藩御細工所」を設立し、職人の育成や工芸品、装飾品などの発展に力を入れました。その伝統は今も引き継がれ、金沢にはさまざまな伝統工芸が息づいています。

その技を生かして、アクセサリーなど、新たなジャンルの作品を手がける工芸作家も増えています。そのような、金沢らしさを詰め込んだ他にはないアクセサリーから、「工芸のまち」金沢の魅力を再発見してみてはいかがでしょうか。

(撮影・文/若井憲)

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工芸作家が作るアクセサリーの魅力とは?

  • ひがし茶屋街のお茶屋の1階にあり、石川県にゆかりのある作家を並べる玉匣

  • 50人を超える作家さんの作品を取り扱う

  • もともと宝石店を営んでいたので、アクセサリーに力を入れている

  • 「ひがし茶屋街には工芸作品を扱うお店が多く、北陸の工芸作家の底力を感じてもらえるのでは」と中村社長

  • 九谷焼、漆、ガラス、染め、ゆびぬき、水引など、個性的で魅力的な作品が並ぶ

  • 水引のアクセサリーも人気

ひがし茶屋街で器やアクセサリー、インテリア小物などを販売する「玉匣(たまくしげ)」の中村大介社長にその魅力を伺いました。

「自由な感性でこれまでにないものを生み出そうと、オリジナリティーあふれる作品をつくっている伝統工芸の作家さんが石川県にはたくさんいます。ジャンルも多彩でその裾野も広く、ジャンルを越えた作家さん同士の結びつきにより、新たな作品が生まれているのは金沢ならではの特徴です」

玉匣で扱っている作品は、従来のイメージを覆すものも多く、一つひとつが手作りゆえ、作品とは一期一会。次に訪ねたときはどんな出会いがあるかを楽しみに、リピートするお客さんも多いそうです。


●金沢市東山1-14-7  TEL:076-225-7455

10:00〜17:00、火曜休(祝日の場合は営業)、不定休あり。橋場町バス停から徒歩約5分

https://shop.tamakushige.com

九谷焼のかけらに新たな命を吹き込んだアップサイクル

  • 2つの陶片を組みわせたブローチ。模様の切り出し方が絶妙

  • 形を整えたら縁に金彩を施し、仕上げていく

  • 九谷焼は成形から絵付けを学んだヨコヤさん

  • 一つとして同じものはないイアリングやピアス

廃棄される「九谷焼」のかけらを使い、唯一無二のアクセサリーを制作しているヨコヤカオルさん。グラフィックデザイナーを経て、九谷焼の世界に飛び込み、石川県立九谷焼技術研修所で学んでいるとき、そこで廃棄される陶片の美しさに心を奪われて、これをカットしてアクセサリーにしようと考えたそうです。

九谷焼の持ち味を生かしつつ、陶片のどこを切り出せばかわいく見えるかを考えるのが面白いと言います。また重たくならないように陶片を薄く削るなど、使う人のことを意識しながら、丁寧に仕上げていきます。


●ヨコヤさんの作品は「玉匣」をはじめ、ひがし茶屋街の「ひがしやま荘」、長町武家屋敷跡の「九谷焼窯元 鏑木商鋪」などでも購入できます。Instagram

金沢らしさをぎゅっと詰め込んだ加賀ゆびぬき

  • たけのこ(右)、金沢すいか(左一番下)、冬の雷(その上)など、金沢らしい模様

  • ゆびぬきをペンダントにするのが定番

  • ひと針ひと針丁寧に仕上げていく

  • 加賀ゆびぬきができるまでの工程を説明してくれた森本さん

  • 手巻きゆえに全く同じ模様はできないので、同じものを2つ作るときはすごく神経を使う

  • 輪島市の小山箸店とコラボした「端ノ簪(はしのかんざし)」。箸につかえないものを芯にした簪

金沢で古くからつくられてきた「加賀ゆびぬき」は、もともとは加賀友禅のお針子さんたちが自分たちの道具としてつくり始めたもの。その小さな中に世界が完結していることに魅せられて、森本道恵さんは20年ほど前、加賀ゆびぬき作家の大西由紀子氏に師事しました。

作品のモチーフには、金沢らしさや季節感にこだわり、冬の雷や金沢すいか、加賀野菜のたけのこなど、金沢愛あふれる独創的な模様がユニーク。約200色もある絹糸から色の組み合わせを考えるのが楽しいそうです。1つ出来上がるまでに手が慣れている森本さんでも5時間くらいもかかると言い、根気のいる作業が続きます。


●森本さんの作品は「玉匣」や「加賀てまり毬屋」、「御細工所 produced by 目細八郎兵衛商店」などで購入できます。Instagram

身につけた人が自信を持てる本物の加賀象嵌

  • 若い人に身につけてもらえるような作品も積極的につくっていきたいと言う

  • 図案をもとにタガネと金槌で金属を削り、複雑な模様をつくっていく

  • ペンダント。図案には決まりがなく、伝統的なものだけでなく、創作的なものもつくる

  • モダンなデザインが目を引くブローチ

  • ピアス。木目模様の金属を嵌め込み、琥珀をアクセントに

  • 作業によって使い分けるタガネ。一本一本自作している

金属に別の種類の金属をはめて模様をつくり出す金属工芸が「加賀象嵌(ぞうがん)」。江戸時代に始まり、明治時代からは、帯留やかんざしなどもつくられ、装身具としての長い歴史があります。加賀象嵌の第一人者で人間国宝の中川衛氏のもとで学び、金沢美術工芸大学大学院を修了した前田真知子さんは、後進の育成にも力を注いでいます。

金や銀といった貴金属を使うため、どうしても高くなってしまうのが悩ましいそうですが、「身につけた人が自信を持てて、勇気が出せる、そんなお守りのような存在になってもらえれば」と願いつつ、加賀象嵌の技法を駆使してモダンなアクセサリーをつくっています。


●前田さんの作品は「金沢・クラフト広坂」や「いしかわ生活工芸ミュージアム」で購入できます。Instagram

つなぐ人が少ない伝統工芸を輝かせる作家たちの作品が揃う

  • 金沢市の希少伝統工芸を中心に扱うショップのほか、2階のギャラリーでは企画展を開催

  • 金沢・クラフト広坂は金沢21世紀美術館の隣にある

  • 作品は1点もので個性的なものもあり、あまり人がつけていないものが多い

  • 希少伝統工芸の技を生かしたさまざまなアクセサリーが揃う

  • これから注目を集めそうな若手作家の作品を集めて4週間ごとに紹介するコーナー

  • 金沢のお土産に悩んだらぜひ立ち寄りたいショップだ

金沢・クラフト広坂は、金沢に息づく伝統工芸の中でも、加賀象嵌のように作り手が少なくなってしまった希少伝統工芸品10種類以上を中心に、約20種類の工芸品を販売しています。ここでも伝統工芸の技を生かしたアクセサリーは人気だと言います。

「他人と同じようなものを持ちたがらない方にとって、希少価値がある作家の1点ものに惹かれるようです。伝統工芸に詳しくない方でも、おしゃれなデザインが気に入って手にされて、そこで初めて加賀象嵌を知っていただくこともあります」とは、金沢・クラフト広坂の森下まゆみ店長。


●金沢市広坂1-2-25  TEL:076-265-3320

10:00〜18:00、月曜休(祝日の場合は翌平日休)。広坂・21世紀美術館バス停から徒歩約2分

https://www.crafts-hirosaka.jp


アクセサリーから「金沢の伝統工芸ってすごい!」ということを感じていただき、お気に入りの作品を見つけに、金沢のまちを歩いてみてください。きっと今まで気がつかなかった金沢の面白さを発見できるハズです。

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  • いしかわ生活工芸ミュージアム(石川県立伝統産業工芸館)
  • 金沢・クラフト広坂
  • 金沢・クラフト広坂

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