
金沢のうまいは発酵にあり!!発酵から生まれる旨みの秘密を探る旅へ
金沢といえば、加賀百万石の城下町として栄えた歴史ある都市。美しい街並みや四季折々の美しい風景が魅力ですが、金沢の本当の魅力はそれだけではありません。長い歴史の中で育まれてきた「食文化」こそ、金沢のの大きな魅力の一つと言えるでしょう。
金沢の食文化を語る上で欠かせないのが「発酵」。醤油や味噌、日本酒などの発酵食品は日本各地で親しまれていますが、金沢には地域の風土と歴史が育んだ、ユニークで特徴的な発酵食品がたくさん存在します。
ここでは、金沢の発酵文化の背景や今も息づく食文化についてみていきましょう。
金沢の発酵グルメを知る
金沢では、伝統的な発酵食品から、時代に合わせて進化した新しい発酵食品もたくさんあります。代表的なものをご紹介します。
①大野醤油
金沢市の大野地区は、日本五大醤油産地の一つとして知られています。大豆と小麦を使ってじっくりと時間をかけて醸造される醤油は、関東の濃口醤油と関西の淡口醤油の中間のような、まろやかで上品な甘みが特徴です。特に魚介料理との相性が抜群です。
②加賀味噌
石川の味噌は、国内で生産される味噌の約8割を占める「米味噌」(米こうじと大豆と塩を混ぜて仕込んだ味噌)です。加賀藩時代には、軍用の貯蔵品として一層盛んに造られるようになりました。米麹を多く使うことで、濃厚でコク深い味わいに仕上がっています。金沢料理の土台を支える味噌です。
③冬のご当地グルメ「かぶら寿し」
「寿し」とはついていますが、一般的にいう「酢飯」+「魚介類」の組み合わせとは異なります。かぶら寿しはカブにブリを挟み、麹で漬け込む冬の郷土料理です。発酵の過程で生じる麹の甘みとブリの旨味が絶妙に調和し、金沢の冬を代表する味覚となっています。
④石川県が誇る禁断のグルメ「ふぐの卵巣漬け(ふぐの子糠漬け)」
ふぐの卵巣は猛毒を持ちますが、糠に2年以上漬け込み、熟成させることで食べられるようにした、全国でも珍しい発酵食品。酒の肴として人気です。
⑤日本酒・焼酎
金沢を含む加賀地方は、日本酒の名産地としても有名です。菊姫、吉田酒造の「手取川」、福光屋の「加賀鳶」などの銘酒があり、国内外で高い評価を受けています。また、福光屋では、蔵人が丁寧に仕込んだ上質の日本酒を使って本格米焼酎も造られており、隠れた名品となっています。
⑥発酵あん
金沢は、和菓子の消費額が日本一ともいわれる(家計調査2023より)「スイーツの街」。老舗和菓子屋「越山甘清堂」では、発酵あんを使用した和菓子が特に人気です。発酵させた小豆を使うことで、砂糖を半分に抑えながら、自然な甘みを実現。栄養豊富で、ポリフェノールも多く含まれており、ヘルシー志向の和菓子として注目されています。
⑦クラフトビール
金沢には3つのクラフトビール醸造所があります(2024年11月現在)。地元の素材を使った「オリエンタルブルーイング」の「湯涌ゆずエール」と「加賀棒茶スタウト」、自家培養した酵母を使用する「金澤ブルワリー」の「金澤麦酒」など個性豊かなビールが揃っています。最後は、2021年、金沢港そばに誕生した「BREW CLASSIC」。初リリースのアメリカンIPA「ハリコマチ フリーダム」は、国内の品評会で金賞を受賞しました。市内に直売所「BREW CLASSIC TAPROOM」がオープンし、店内で楽しむことができます。
⑧ワイン
金沢は日本酒の名産地として有名ですが、近年ではワインの生産も盛んになってきています。
金沢でとれたブドウのみを使用する「Vin de la Bocchi(ヴァン・ド・ラ・ボッチ)」、能登半島の自社農園産ブドウ100%を使用したワインを造っている「金澤ワイナリー」など、地域に根ざしたワイン作りをしています
金沢に発酵文化が根付いた理由
~なぜ金沢で発酵文化が盛んになったのか?~
金沢が発酵食品で有名な理由は、その自然環境と深い歴史にあります。金沢は加賀藩の城下町として栄え、城下町特有の食文化や技術が発展しました。発酵食品が盛んな背景には、以下の要素が大きく影響しています。
1: 百万石の大国「加賀藩」
加賀藩(前田家)は、16世紀から19世紀初頭にかけて日本海側で最も繁栄した藩の一つです。藩主は商業や農業の振興に力を入れ、そのためには安定した食糧供給が不可欠でした。商業が発展する中で、発酵食品が保存性が高く、長期間保存できるため、貴重な食品として重宝されました。その中で、大豆を使った味噌や醤油、発酵技術が発展し、特に加賀味噌は藩内外で有名でした。
2: 北前船交易の影響
金沢は北前船の交易拠点として栄え、商人たちが新しい技術や食文化を取り入れることができたため、発酵食品も地域内で活発に作られるようになりました。北前船によって、醤油作りに必要な大豆や小麦、塩や麹などの材料が全国から集まり、新しい発酵技術や文化が金沢にもたらされました。また、北前船の重要な寄港地の一つであった金沢は、醤油を全国に流通させるための拠点として最適だったのです。
3: 豊かな自然環境(海の幸と山の幸)
日本海に面した金沢は、新鮮で豊富な魚介類に恵まれています。また、内陸部には豊かな山々が広がり、山の幸や米、野菜も豊富に手に入ります。さらに、発酵に必要な塩も輪島をはじめとする能登半島から手に入れることができました。これらの食材を長期保存するために、発酵という技術が利用されてきました。また、白山から流れ出る豊かで清らかな伏流水は、発酵の仕込み水として利用されており、高品質な発酵食品を生み出す土壌が整っています。
4: 発酵に適した気候
金沢の湿度が高く、特に冬は寒冷という気候は発酵に適した環境となっており、ゆっくりと風味が深まる発酵を助けます。
発酵文化を体験できるスポット
<食品>
四十萬谷本舗:かぶら寿しや金沢の伝統発酵食品を取り扱う老舗。エムザや駅構内でもお買い求めいただけます。かぶら寿しの漬けこみ体験(季節限定・要予約)や発酵ランチ(要予約)も楽しめます
髙木糀商店:ひがし茶屋街にある金沢唯一の糀専門店発酵食品店 ※小売りのみです
あら与(白山市):ふぐの卵巣(ふぐの子)ぬか漬・粕漬 工場見学ができます。 access: 金沢駅からIRいしかわ鉄道福井行で約20分「美川駅」下車、徒歩約5分
石黒種麴店(南砺市):北陸で唯一、全国でも数少ないの「種麴屋」、1877年創業。昔ながらの伝統的工法による製法。※小売りのみです access: 金沢駅から南砺ー金沢線バスにて約50分「福光駅」下車、徒歩約10分
<醤油・味噌>
ヤマト・糀パーク:見て触れて、五感で発酵文化を楽しむテーマパーク。「糀パークツアー」では、スタッフの案内で、迫力満点の「糀蔵」で発酵食品について学んだり、パーク内のヤマト醤油味噌の歴史を感じるスポットを巡ります。手がすべすべになる糀手湯など、どなたでも楽しみながら参加できます。
直源醤油:醤油を造り続けて400年。もろみの雫をはじめ、直っぺ醤油など、金沢の食文化を支える醤油を製造。工場見学が可能です(要予約)。大野醤油の特徴、歴史や、お醤油の原料や製造方法についてご説明いたします。
<日本酒>
福光屋:創業1625年、金沢の老舗酒蔵。「唎き酒コース」と「蔵元見学 蔵内コース」の2種類(要予約)あり、蔵内コースは11~3月限定の開催となり、専門スタッフによる蔵内見学は約90分の充実した内容です。
やちや酒造:殿様専用の酒造りをするため、加賀百万石の藩祖前田利家公のお供をして尾張の国から移住したのが、やちや酒造のはじまりです。 1628年、「谷内屋(やちや)」の屋号と、加賀の国の「加賀」とおめでたい「鶴」をつけ「加賀鶴」の酒銘を殿様より拝受。 1日3回酒造見学が可能です(要予約)
<ワイン>
Vin de la bocchi(ヴァン・ド・ラ・ボッチ) 自然豊かな金沢・俵町で育てた金沢産100%のぶどうを使ったワイン。家族経営の小さなワイナリーなので、事前にお電話で確認の上おでかけください。
<ビール・ウィスキー>
オリエンタル・ブルーイング: ローカルでユニークなクラフトビールを造り続けている『オリエンタルブルーイング』。石川県初のウィスキー蒸留所も併設しており、ビール・ジン・ウィスキーの製作過程の見学が可能です。
<その他>
近江町市場:新鮮な魚介だけでなく、様々な発酵食品も手に入ります。
Column
【季節限定】四十萬谷本舗 かぶら寿し体験教室
金沢を代表する老舗の漬物店、1875年創業の老舗「四十萬谷本舗」では、初心者でも手軽にかぶら寿しの漬け込みが体験できます。季節は冬(11月、1~3月)限定。まずは、四十萬谷自慢のお漬物や発酵食品をご試食をいただきながら「かぶら寿し」のお話を聞きます。その後、指導いただきながらかぶら寿しを実際に漬け込みます。かぶら寿しの漬けこみ体験を通じて、金沢の食文化に触れることができる貴重な機会です。自分たちで作ったかぶら寿しは、お土産として食べる・贈る楽しみも!
100年を越す町家での季節限定の体験を是非!
