金沢商業高校3年生:日常の景色が変わった日
修学旅行で金沢を訪れる中学生を、地元の高校生が案内する――。
金沢商業高校の生徒たちが授業の一環で取り組んでいるボランティアガイド活動は、単なる観光案内にとどまりません。
「初対面の人とうまく話せるか」「方言は通じるか」そんな不安を抱えながら始まった挑戦 。
金沢商業高校3年生の笹山凜音(ささやま りん)さん、富田真生(とみた まお)さん、笹田芽衣(しのだ めい)さん。3人の現役高校生のインタビューから、これからの金沢観光のあり方を探ります。
(インタビュー取材:2026年1月)
見慣れた景色に潜む「歴史の差」の面白さ
ガイドを始める前、彼らにとって金沢のまちなみは「当たり前の日常」でした。しかし、案内のために改めて歴史や由来を勉強し直すことで、その見え方は一変します。
「以前はおじいちゃんたちと何気なく見ていた金沢城も、門の構造を知ることで、当時の戦(いくさ)の様子が想像できるようになりました(富田さん)」。
また、古いまちなみのすぐ隣に現代的な美術館があるという、金沢ならではの「歴史の差(ギャップ)」も、案内して初めて気づいた魅力の一つ 。 知識を得ることで、毎日の通学路が「歴史の重み」を感じる特別な場所へと変わっていきました。
「ただの苔」がフォトスポットに? 外からの視点で気づく価値
自分たちがスルーしてしまうようなものでも、県外の生徒たちには感動の対象になることに、驚いたとのこと。
「案内中に、なんてことない苔(こけ)や木を一生懸命撮っている姿を見て驚きました(笹山さん)」。
「金沢城の石垣を見て『この大きな石、どこから持ってきたの?』と感動してくれて。自分たちの日常が、実は貴重な自然や歴史に囲まれているんだと気づかされました(笹田さん)」。
都会から来た子たちの純粋な反応が、彼女らにとっての「地元の価値」を再発見させる鏡となったのです。
方言も武器に。年齢が近いからこそできる「共感」ガイド
一方的な解説ではなく、楽しんでもらうためのコミュニケーションも高校生ならではの工夫が光ります。 あえて石川の方言を直さずに話すことで、「それどういう意味?」と会話が弾むきっかけに 。
また、疲れが見える生徒には出身地で流行っているものの話を聞いたり、日本武尊(ヤマトタケル)像の前で「これ誰だ?」「石積の部分に隠れてる生き物は何?」といったクイズを出したりと、相手に合わせた「おもてなし」を実践しています 。
「やんちゃな子にはあだ名やタメ口で接して、友達のような距離感を作りました」というエピソードからは、マニュアル通りではない、心を通わせる交流の姿が浮かび上がります 。
マナーが悪いのではなく「知らないだけ」。相互理解への一歩
観光客のマナー問題についても、彼らの視点は冷静で温かいものへと変化しました。 以前はバスの乗車マナーなどに不満を感じることもありましたが、「実はまちのルールを知らないだけなんだ」と気づき、事前に教えることの重要性を実感しています 。
「外国語の案内やツールがもっとあれば、観光客も困らないし、地元の人のストレスも減るはず(富田さん)」。
住む人は「来てくれてありがとう」の感謝を、訪れる人は「生活の場にお邪魔する」という謙虚さを 。 互いにリスペクトし合う気持ちこそが、持続可能な金沢の観光の未来をつくる鍵なのかもしれません。
Column
水の美味しさ、再発見!
「金沢の水は地元より圧倒的に美味しい!」と他県の生徒たち。蛇口をひねれば美味しい水が出てくること、それがどれほど贅沢で恵まれた環境なのかを、外の世界を知ることで実感しました。全国でも珍しい「用水のまち」 金沢。豊かな水は、金沢の食や暮らしを支える誇りです。

地元が自慢のふるさとに。胸を張って言える「金沢が好き」
ガイド活動を通じて一番大きく変化したのは、案内する生徒たち自身の「地元へのまなざし」でした。 活動を始める前、富田さんは金沢のことを「特にこれといったものがない場所」だと感じていたと言います。 「でも、歴史や文化を深く知り、その魅力を自分の言葉で伝えるうちに、自信を持って『金沢が好き』と言えるようになりました」。知識を得て、誰かに喜んでもらう体験が、地元への確かな自信へと変わっていったのです。
笹山さんもまた、当たり前すぎて気づかなかった価値を再発見しました。 「蛇口をひねれば美味しい水が出ることも、四季折々の豊かな自然が身近にあることも、決して当たり前じゃない。今はその全部が愛おしいです」。 知ることは、好きになること。金沢を「誇れる地元」として再定義した彼らの言葉には、未来の金沢を担う力強さが宿っています。