金沢の個性あふれる宿7選。泊まるなら思い出を作れる宿に。

インバウンドをはじめ、たくさんの旅行客から好評を得ている金沢市には、宿泊施設も年々増えています。
金沢を訪れるのが2度目・3度目の人や、ただ寝泊まりのためだけではなく宿泊もひとつの体験として思い出に残したいという人に、個性的な宿を7軒ご紹介します。


1. ユニークな町家に泊まる!

金沢といえば町家を想像する人も多く、町家を改装した宿は常に高い人気を誇ります。最近では、ただ町家であるだけでなく、プラスアルファの個性を持つ宿も増えてきました。今回は、食に対するアプローチを持つオーベルジュと文豪にちなんだ町家宿を紹介します。

ご紹介する宿/【薪の音 金澤】・【町の踊場】

 

2. ローカルに触れ合うことができるホテル

金沢には、コミュニケーションが生まれるホテルがあります。ホテルとしての機能はきっちりと享受しながら、地域に住んでいる人ならではの目線を取り入れて楽しむことができます。著名な観光地を抑えたならば、次は金沢人たちと少し触れあいながら、同じように遊んでみましょう。

ご紹介する宿/【KUMU kanazawa】・【LINNAS Kanazawa】・【OMO5金沢片町 by 星野リゾート】


3. ここは金沢!? 里山にある宿

観光の中心は市街地ですが、もちろん金沢にも豊かな自然があります。しかも車で20分も走ればすぐに到着。そんな里山にある宿を2つ紹介します。おいしい空気を胸いっぱい吸い込み、視界の多くを占めるのは田んぼや森。喧騒から離れた里山で、さて何しよう?

ご紹介する宿/【Onsen & Garden 七菜】・【滝亭】

801ビュー

街ぐるみのオーベルジュ。【薪の音 金澤】

  • テラスに向けてキングベッドを配したプライベート感のある部屋「HIGASHI」

  • 以前にこの場所にあった町家の資料を元に違和感がないようデザインされた新築の町家建築

  • 東山和今の「椀物:甘鯛 マツタケ」

  • 東山和今の「焼物:しらこ 加賀レンコン」

街なかのオーベルジュという珍しい体験を提供している〈薪の音〉は、〈東山 和今〉という日本料理店を構えています。
とはいえ、歩いて行ける範囲においしい飲食店がたくさんあるという立地を活かしてそれらをネットワークし、利用することができる型破りなオーベルジュです。薪の音オーナーは、みずからの足で幾度となく飲食店に通うことで、提携を結んでいきます。


「金沢の食文化は日本一だと思います」と言うオーナーのお眼鏡に叶ったのは、寿司や日本食はもちろん、料亭、鉄板焼やフレンチ、居酒屋まで予約困難店がずらり。基本的には、お店を指定するのではなくお任せしてほしいとか。


「味だけではなく、雰囲気、おもてなし、店主やシェフの人間性なども加味してお願いしています。提携店は、薪の音からのゲストではなく自分たちのゲストであるというように接してくれています。」


実は金沢市有数の観光地「東茶屋街」には、宿泊施設はあまり多くありません。中に泊まれば、お昼の喧騒とは異なる朝の爽やかさ、夜のしっとりさを感じることができます。

徳田秋聲ゆかりの宿から感じる時の経過。【町の踊場】

  • 「蒼白い月」にあわせて青い壁。加賀藩前田家がラピスラズリを原料とした蒼が好きだったことにもちなんでいる。

  • 「雲のゆくへ」から庭を望む。

  • 対照的に「雲のゆくへ」は、金沢のお茶屋さんなどでよく使われる赤を採用。

  • 蔵に残されていた蓄音機を修理して使用している。

金沢には有名な三文豪がいます。泉鏡花(いずみきょうか)、室生犀星(むろうさいせい)、そしてこの〈町の踊場〉という宿名の由来になっている徳田秋聲(とくだしゅうせい)です。ここは彼の異母兄である正田順太郎が住んでいた築150年の武家屋敷で、秋聲が訪れた様子が短編小説『まちの踊り場』に描かれています。秋聲が寝泊まりしていた部屋は、現在は併設する「蔵カフェ」の2階にあり、並んでいる秋聲の小説などを読みながら過ごすことができます。


歴史ある空間に、この家にかつてからあったという蓄音機やミシンなども置かれています。また蔵カフェでは10時間以上かけて抽出した水出しコーヒーが名物。このように「時間の経過」を感じさせてくれるものばかり。現代とは異なる時間の価値観を感じて、ゆっくり過ごしてほしいといいます。

部屋は「蒼白い月」「雲のゆくへ」の2部屋。この部屋名も秋聲の小説にちなんでいます。
徳田秋聲に詳しくない若い人が泊まっても「日本人で良かった」と再認識できるような感性にあふれています。

宿泊者だけの情報でディープ金沢を。【KUMU kanazawa】

  • エントランス

  • 朝食会場やカフェとしても利用できる「TEA SALON KISSA & Co.」。

  • 毎週土曜日に開催されている「MUSIC & Co.」。

  • 茶室の美学を現代的に表現したツインの和洋室「Junior Suite with Japanese-style」

KUMUは全国に展開しているザ シェアホテルズグループのひとつ。「シェアリングウィズローカルズ=地域共生」をコンセプトにしています。それは地域に根ざしたプレイヤーといっしょにホテルをつくりあげること。たとえば正面カウンターには、地元の金工作家・竹俣勇壱さんが選定・制作した茶釜や茶道具が並び、金沢美術工芸大学出身の関祐介さんによるインテリアを使用するなど、由縁のある人たちが関連しています。


宿泊客だけがアクセスできるホームページには「ローカルガイド」ページがあり、KUMUスタッフおすすめのスポットが掲載されています。「KUMUには建築に興味があったり、金沢が初めてではなく目的があるようなお客様が多いので、そういう方でも楽しめる場所を選ぶようにしています」と話す澤野彩さん。どんなお店が載っているかは、泊まってみてのお楽しみ。


また、毎週末、1階の「TEA SALON KISSA & Co.」にて「MUSIC & Co.」というDJイベントを開催しています。登場するのはすべてローカルのDJたち。最近ではゲストとDJたちのコミュニケーションも増えているといいます。音楽が好きでも、旅先で音楽イベントなどの生の情報を得るのは難しいもの。KUMUにはローカルの情報がみっちり詰まっています。

友だちに会いに行く感覚で泊まる。【LINNAS Kanazawa】

  • フェレスピースニンのような会合が自然発生する

  • ツインルーム

  • 宿泊客が自由に使えるラウンジ

  • ジョギングとゴミ拾いが融合したプロギングの様子

代表の松下秋裕さんがかつて住んでいた北欧のエストニアと金沢市に共通点を感じ、デンマーク語で「満ち足りた」や「居心地のよい」を意味する「ヒュッゲ」をテーマに掲げているのがLINNAS Kanazawa。


ホテルが点だとすると、リンナスが考えているのは面でのおもてなしです。従業員ひとりひとりがまちに出て、どんどんつながりを作っています。そのなかから自分の本当に好きなスポットをゲストにおすすめ。「リンナスの誰々さんの紹介できました」という話のきっかけをつくることができます。


逆に金沢ならではの食体験のおもしろさとして、「◎◎の△△さんに会いに行く」という旅を推奨。ただ「寿司」や「金沢おでん」ではなく、お店と人の顔がつながっているとリピーターになりやすくなります。


ジョギングしながらゴミ拾いするプロギング、デンマーク式の食事の集まりであるフェレスピースニンなど、イベントが多いLINNAS。その多くは地元民に向けてものですが、もちろんタイミングが合えば宿泊客の参加もウエルカム。金沢の豊かな暮らしを垣間見えるかもしれません。

OMOレンジャーと一緒に街を歩ける!【OMO5金沢片町 by 星野リゾート】

  • 長町武家屋敷あたりを案内している「金沢片町味わいまっし散歩」の様子

  • ロビーにあるご近所マップ

  • 部屋のカーテンとソファは、金沢名物の「雪吊り」がモチーフにされている

  • 「金沢KOGEIナイトサロン」では、伝統工芸を用いた空間でお茶を淹れてもらえる。

「OMO by 星野リゾート」が展開する街ナカホテル〈OMO5金沢片町〉では、地域を知るスタッフから街について教えてもらうことができます。特に「ご近所ガイドOMOレンジャー」と呼ばれるガイドが行う、2つのツアーがユニークです。


まずは「金沢21世紀美術館お散歩ツアー」。無料観覧エリアをツアーしながら、作品の裏話なども聞けちゃいます。もうひとつは「金沢片町味わいまっし散歩」。ホテル周辺を1時間かけてお散歩。基本コースは決まっていますが歴史好き、工芸好き、お酒好きなど、その日のガイドの嗜好によって内容にグラデーションがあるとか。知る人ぞ知るディープな情報まで知れるようです。


最近の取り組みとしては、今年4月から始まった「金沢KOGEIナイトサロン」があります。石川県の伝統工芸で装飾された空間で、スタッフが1杯ずつていねいにお茶を淹れてくれます。加賀棒茶の歴史や茶店ごとのこだわりを聞きながら、2種類のお茶を飲み比べできます。この体験後、実際に急須や茶葉を買ってくれる人もいるようです。お客様の日常へ、そしてまちへの広がりにもつながっていきます。

環境が心地よい、ありのままの【Onsen & Garden 七菜】

  • ある日の夕食。「鹿やイノシシなどジビエを使ったフルコース」

  • ランチやカフェのスペースも抜けの眺望が心地よい

  • 青森ヒバのお風呂

  • 「山桜のお部屋」から見える川の風景

  • 「欅のお部屋」。お風呂直結の部屋で、岩造りのテラス付き

金沢市といえど、市街地から車で20分ほど行くと、里山の丘の上に〈Onsen & Garden 七菜〉はあります。奥飛騨から移築したという古民家も見応えがありますが、眼下に広がる川と田んぼの風景は心が晴れやかになります。「川の風が上がってきて涼しいんですよ」と迎えてくれたのは徳山菜月さん。


ここを訪れた人には、どんなバックボーンがあろうと「ありのままに」過ごしてほしいと言います。例えばベジタリアンやビーガンへの食事対応。周辺環境にもその思いを巡らせています。自分たちが宿をやることで環境を汚すのではなく、自然もありのまま。それゆえに、倒木を使用した廃材エネルギー、太陽光エネルギー、地元食材を使うことによるフードマイレージなど、多くのサステナブルな取り組みを行っています。温泉もありのままの源泉かけ流し。源泉かけ流しならば塩素が少なくて安心と小さなお子様連れも多いようです。


温泉には地域名である七曲り温泉と名付けました。宿であっても地域に開かれた場所にしたいという思いが込められています。宿泊客以外の入浴も可能(ランチやカフェ営業も)ということで、まずは気軽に訪れてみてもいいかもしれません。もし気に入ったのならば、次はあえて街場を外して、里山でのんびり過ごす金沢もいいのでは?

里山の宿で、本に溺れる宿泊体験を。【滝亭】

  • 川を望む露天風呂付きの客室「離れ 犀川」

  • マッサージチェアも置いてあるアートブックギャラリー「こもれび」

  • 開放的なラウンジ内にある小さなライブラリー「魚眠洞」

  • 泉鏡花が好きなうさぎが随所にモチーフにされている「書庫 兎夢」

きっかけはコロナ禍。外出を控え「おこもり」で宿を利用されるお客様に、少しでも楽しんでほしいという気持ちで、ライブラリーが拡充されていきました。滝亭のコンセプトとして「テーマパーク」のように楽しんでほしいと言います。「本当は観覧車を置きたいくらい」と笑う常務取締役の谷崎康織さんですが、そうもいかないので、老若男女が楽しめる本の世界で琴線に触れてほしい。


館内には3つのライブラリーがありますが、その言葉通り、画集や写真集から絵本、小説、漫画など多種多様。石川の文化にふれてほしいと郷土本も揃っています。2024年に開設されたのが、金沢三文豪のひとり、泉鏡花(いずみきょうか)をテーマにしたライブラリーです(ほかは徳田秋聲[とくだしゅうせい]と室生犀星[むろおさいせい])。大正ロマンを感じる空間で、本の沼にはまってしまいそうです。


「本の続きを読みに来た」というリピーターもいるとか。しっぽりと本を読んで過ごすもよし、3つのライブラリーをはしごするもよし。本であれば、どの世界に旅するのもあなた次第です!

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