金箔職人 寺本健一 KANAZAWA EXPERT #10
「KANAZAWA EXPERT」は、昔からの文化が息づく街・金沢で、伝統の技や金沢の歴史・文化を訪れる人たちに発信している作家や職人、その道のプロフェッショナルたちをご紹介する企画です。金沢を熟知する案内人でもある方々に、ここでしかできない体験や金沢の楽しみ方をお聞きします。
今回は100年以上の歴史を持ち、美しくきめ細やかな金箔をはじめ、金に輝く数々の商品を生み出している「金箔屋さくだ」の職人・寺本健一さんに話をお聞きしました。
朽ちることのない、永遠の輝きに魅せられて
金沢箔の魅力や特徴について教えてください。
金沢箔とは、金沢で製造された金箔をはじめ真鍮箔、銅箔、銀箔などの総称です。金箔は純金に微量の銀、銅を加えた合金を使うのですが、この合金のもつ輝きを失うことなく1万分の1ミリ程度の厚さ(10円硬貨大のものを畳4~5枚の広さ)まで均一に広げるのが職人技です。金沢は湿度が高く製箔に適した気候であり水質等にも恵まれたため金沢箔の製造が盛んになり、現在では全国の金箔生産量の100%のシェアを誇っています。
金箔の魅力とは、決して朽ちることのない永遠の輝きです。1万分の1ミリに打ち伸ばした金箔はどんなものにも馴染むしなやかさを持っており、それが数々の工芸品や商品を生み出すことにつながっているのだと思います。
寺本さんはどのようなキャリアを歩んできたのでしょうか。
金沢市東山で生まれ育ち、工業高校を卒業後は鉄工所で数年間働きました。その後、金箔職人を目指して「金箔屋さくだ」の門を叩き、10年間かけて金箔づくりを習得しました。現在は商品製造をメインで担当しており、オーダーメードの依頼を受けて金箔を貼り付けたり、神社の装飾なども行ったりしています。金箔は素材ですので、形があるものなら何でも貼り付けることができ、様々なものにチャレンジできるのが楽しいですね。
貼り方によって表情を変える金箔の面白さを伝える
金箔貼り体験の魅力やポイントを教えてください。
「金箔屋さくだ」が金箔貼り体験をスタートしたのは1995年頃のことです。現社長が「地元の子どもたちに金箔をはじめ石川の伝統工芸を知ってもらいたい」と考え、箸や盃に金箔を貼る体験を始めたことがきっかけでした。その頃は「手軽に体験していただきたい」という思いからワンコイン(500円)で実施していたんですよ。
現在は箸の金箔貼り体験をはじめ、ミニ桜箱や角小箱、梅小箱といった小箱の金箔貼りも好評です。体験の前に金箔を作る工程をご説明するのですが、実際に金箔の薄さに触れると、改めてその薄さにみなさん驚かれています。また、同じものに貼っても絶妙に風合いが異なるのが金箔の魅力。貼り方によって表情を変える金箔の面白さをお伝えするようにしたりしています。始めはあまり乗り気ではない様子の方でも、体験が終わる頃には満足した表情をしていらっしゃる姿を見ると嬉しいですね。そのほか本店では金箔の製造工程見学をはじめ、金箔工芸品ショップで買い物を楽しんだり、金箔ミニミュージアムでさまざまな屏風をご覧いただいたりすることができますよ。
迷路のようなひがし茶屋街散策を楽しんで
金沢の魅力やおすすめのスポットを教えてください。
観光地として有名なひがし茶屋街は私の地元。子どもの頃はよく走り回って遊んだものでした。細い路地がたくさんあり迷路のようで楽しいですし、寺院も多くあるので色々と歩き回ってみるのがおすすめです。
寺本さんにとって「金沢」とは何でしょうか。
大袈裟な表現になってしまいますが、自分の一部でしょうか。子どもの頃はひがし茶屋街にある人気洋食店「自由軒」で出前を取ったり、卯辰山の花菖蒲園で遊んだりした記憶があります。また、余談ですが結婚式は東山の宇多須神社、披露宴は同じく東山の料亭「山乃尾」で行いました。金沢とは地元であり、自分の人生と切っても切れないものですね。
金箔屋さくだ 製造部 寺本健一さん
1969年、金沢市東山に生まれる。工業高校を卒業後、金沢市内の鉄工所勤務を経て、「(株)金銀箔工芸さくだ」に飛び込みで入社。10年ほど箔打ちを学んだ後、箔貼り担当を経て現在は商品製造をメインで担当している。石川県観光PRマスコットキャラクター「ひゃくまんさん」に金箔を施したほか、金沢市のPRのため、日本全国をはじめ、海外各国(ニューヨーク、ロンドン、パリ、シドニー、ニュージーランド、香港、シンガポール、マレーシアなど)で活動。
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- 金箔屋さくだ 本店
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