音楽をめぐる旅 2

音楽をめぐる旅 Vol.2「金沢工業大学 ライブラリーセンター PMC」

金沢工業大学 ライブラリーセンター PMC
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大学の図書館というと、学外の人間には敷居が高そうですが、ここ「金沢工業大学」の附属図書館「ライブラリーセンター」は一般も利用できる、むしろぜひ利用したい図書館です。工学系の研究目的であれば図書の利用もできますが、この図書館の3階にある「PMC(ポピュラー・ミュージック・コレクション)」が、今回の音楽をめぐる旅の目的地。「ライブラリーセンター」の入口受付で簡単な手続きを済ませれば、学生でなくても利用できます。

「PMC」は、1960年代後半から音楽・映画・美術・舞台など、幅広いジャンルで活躍されているメディアプロデューサーの立川直樹さんから寄贈された1万7000点のレコードを基に、1992年に設立されました。以前から大学の広報アドバイザーをつとめていた立川さんが、あるとき発した「学生は音楽を聴いているの?」という言葉が始まりでした。「若い学生に音楽を聴いてほしい、楽しんでほしい」という立川さんの想いと、授業が終わるとすぐに帰宅してしまう学生の学内滞在時間を少しでも伸ばしたいと考えていた大学側の想いが重なり、コレクションの寄贈が決まりました。また、大学はアナログのレコード・ジャケットの芸術性にも着目。この素晴らしいジャケット・アートの数々が、モノづくりをする学生の感性を啓蒙してくれるのではないか、技術と文化の関係を問い続ける契機になるのではないかと考えました。その考えがまさに的中、「PMC」は学生たちの好奇心・創造性に火をつける存在になっていったのです。


24万点を超える膨大なコレクション

金沢蓄音器館
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写真1・2:音の世界にどっぷり浸れる「ボディ・ソニック」で、お気に入りのレコードやCDを満喫。
写真3:アート鑑賞としても見応えがあるレコードジャケット。
写真4:某ミュージシャンが探し続けていた幻の試聴版。販売用にはないボーナストラックが収録されている。

1万7000点からスタートした収蔵品は、アナログとCDを合わせて現在は24万点以上。立川さんから累計3万2000点、その他は全国の愛好家から寄贈されたものです。ロックやジャズ、ポップスをはじめ、あらゆるポピュラー・ミュージックを収集し、なかには絶版になったもの、CDでは入手できない貴重なものも多数あります。そして、体感音響装置「ボディ・ソニック」やレーザートラッキング式プレイヤーなど、極上の音楽関連機器も備えられ、最高の環境で音楽を楽しめるのも魅力になっています。

LPレコードやCDは常時1万枚がフロアに配架され、パソコンで収蔵作品の検索も可能なので、カウンターで利用手続をするとすぐに試聴できます。今回、案内してくださったPMC運営室の清田良一さんによると、有名ミュージシャンもコンサートで金沢を訪れた際やプライベートで「PMC」に足を運ぶリピーターが多いそう。某有名ロックミュージシャンが、長年探し続けていた一般販売されていないデヴィッド・ボウイの試聴版に出会えたと感激したというエピソードも。「PMC」の噂を聞きつけて全国から足を運ぶ一般の方も後を絶たず、「青春時代を思い出す」「これは買いたくて買えなかったアルバムなのです」と懐かしむレコード世代から、「深くてやさしい音がするんですね」と、レコードの魅力を発見するデジタル世代の学生や若い一般客まで利用者は幅広い。


モノづくりの技と精神で、失われた音が蘇る

金沢蓄音器館
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ジューク・ボックスは100円を投入すると、好きな曲を選んで聴くことができます。100円はスイッチ代わりで、お金は戻ってくるので回収をお忘れなく

フロアでひときわ目を引くジューク・ボックスは今でも現役。もとは金沢市内のダンスホールで壊れて動かないため飾りとして使われていたもので、寄贈を受けてから工学部の研究室が修理を行い見事に復活させたものです。すでに廃番で入手できない部品も、歯車一つから手作りするところがさすが。ずらりと並んだ体感音響装置「ボディ・ソニック」も、すでにメーカーで製造が中止され、修理も部品の取り寄せもできなくなっていますが、こちらも同様に学生たちが修理を担当するなど、「PMC」が見事な実習体験の場になっていることにも感心します。

音楽好きにとっては宝の山のような「PMC」。収蔵品は館内での試聴のみで、館外への貸し出しや録音はできないので、たっぷり時間の余裕をもって出かけたい場所です。


<PMC運営室・清田良一さんのとっておき>

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清田さんに選んでいただいた「とっておきの一枚」は、レッド・ツェッペリンのデビューアルバム『レッド・ツェッペリン』(P-8041A)。フォークバンドのボーカルもしていた清田さんですが、実は聴くのはロックがお好き。金沢工業大学が中心となって設立されたコミュニティFM局「えふえむ・エヌ・ワン」(FM 76.3 MHz)では、学生が番組制作や出演も行い、清田さんも音楽知識と語学をいかしたオールディーズや英語の番組を週5本担当。リクエスト曲には「PMC」のコレクションも大活躍。パソコンで全国から聴けるサイマル・ラジオでも放送しているので、旅の予習に聴いてみるのもおすすめです。

スポット情報
金沢工業大学 ライブラリーセンター PMC
石川県野々市市扇が丘7-1
金沢工業大学 ライブラリーセンター
TEL 076-246-2112(代表)
TEL 076-294-6437(PMC運営室)
開館時間 月〜金曜 8:30〜22:00 ※一般は18:30まで
土曜 8:30〜17:00
日曜・祝日 10:00〜17:00
休館日 開館カレンダー参照
http://www.kanazawa-it.ac.jp/kitlc/info/index.html
入館料 無料
アクセス JR金沢駅から北陸本線・福井方面行き西金沢駅下車、新西金沢駅から北陸鉄道石川線・鶴来方面行きに乗り換えて野々市工大前駅下車、徒歩7分
http://www.kitnet.jp/pmc/information.html

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